性能だけじゃない包丁の選び方|鋼材・柄・見た目・職人

前回は、

「高い包丁は、本当に良い包丁なのか?」

という話をしました。

  • 切れ味
  • 硬度
  • 刃持ち
  • スペック

この辺りを考えていくと、最終的には一つの問題にぶつかります。

性能だけでは決められない。

今回はそこから先の話です。

01

鋼材は大事。でも鋼材だけを見ないでください

包丁について調べていると、

  • VG10
  • SG2
  • 銀紙三号
  • 白紙二号
  • 白紙一号
  • 青紙二号
  • 青紙一号
  • 青紙スーパー

いろいろな名前が出てきます。

そして調べれば調べるほど、

「SG2の方がVG10より上なのか?」

「白紙一号の方が白紙二号より切れるのか?」

「青紙スーパーって名前からして強そう」

みたいな話になっていきます。

気持ちは分かります。

名前と数字が付いていると、どうしても順位を付けたくなるんですよね。

ただ、

鋼材は包丁の性能を決める重要な要素ではありますが、包丁そのものではありません。

同じSG2でも、熱処理、硬度、刃の厚み、研ぎ、刃付けなどが変われば、 使った感覚も変わります。

SG2

包丁の性格を左右する要素

熱処理 硬度 刃の厚み 研ぎ 刃付け
包丁 A
包丁 B
同じSG2でも、まったく違う包丁になる

同じ白紙一号でも、誰がどう作ったかによって性格は違います。

ですから鋼材は、

包丁を選ぶための答えではなく、包丁の性格を理解するための材料

として見ると分かりやすいと思います。

「SG2が欲しい」

でも構いません。

でも、その理由を一度考えてみてください。

「錆びにくくて、刃持ちが良いものが欲しい」

という希望が先にあって、その候補としてSG2が出てくる。

この順番の方が、自分に合った包丁には辿り着きやすいと思います。

02

柄は見た目だけのものではありません

刃の話ばかりしていると忘れがちですが、包丁には柄があります。

包丁の柄には、大きく分けると、

  • 和柄
  • 洋柄

があります。

一般的に和柄は比較的軽いものが多く、洋柄は重量のあるものが多い傾向があります。

そして、この重量差は思っているよりも包丁全体の使い心地に影響します。

柄の重量による包丁の重心とバランスの違い

同じような刃でも、軽い和柄を付けると刃側の重さを感じやすくなり、 重い柄を付ければ手元側に重心が寄ってきます。

つまり、

柄が変わると、包丁全体のバランスも変わる

ということです。

また、握ったときの感覚は数字ではなかなか説明できません。

八角柄が好きな人もいれば、洋柄の方が手に馴染む人もいます。

  • 太い方が好きな人
  • 細い方が好きな人
  • 軽い方が好きな人
  • 重い方が好きな人

この辺りはかなり個人差があります。

「高い柄の方が握りやすい」

という単純な話でもありません。

実際に持てる環境であれば、ぜひ持ち比べてみてください。

写真で見ていたときには第一候補だった包丁を握ってみたら、

「あれ?」

となることもあります。

逆に、全然候補に入れていなかった一本を握った瞬間、

「これだ」

となることもあります。

03

見た目で選んでもいいんです

ここまで真面目にいろいろ考えてきました。

じゃあ最後は性能を全部比較して、最も合理的な一本を選びましょう。

……と言いたいところですが、

見た目で選んでもいいんです。

むしろ私は、見た目もかなり重要だと思っています。

  • ダマスカス
  • 黒打ち
  • 鏡面
  • 槌目
  • 黒染め
  • 漆の柄
  • 天然木

包丁には本当にいろいろな見た目があります。

さまざまな仕上げとデザインの包丁

「見た目だけで選ぶのは良くないですか?」

と聞かれることがありますが、用途を満たしている候補が何本かあるのであれば、

最後は好きな見た目で決めても何も問題ありません。

毎日使う道具です。

気に入った包丁がキッチンにあることで、

「今日はこれを使いたいな」

と思える。

料理するのが少し楽しくなる。

それだって道具として立派な価値だと思います。

特に高価格帯の包丁になるほど、性能だけでは説明できない価値が増えてきます。

  • 職人
  • 模様
  • 仕上げ
  • 希少性

その中で、

「なんかこれが好き」

という感覚は、意外と大切です。

04

「誰が作ったか」で選ぶ

そして最後は、

「誰が作った包丁なのか」

という世界です。

日本の包丁づくりでは、一本の包丁を一人だけで完成させるとは限りません。

  • 鍛造をする鍛冶師
  • 形を整え、刃を作る研ぎ師
  • 柄を作る職人

それぞれの工程を専門の人が担当することがあります。

最初は、

「青紙一号が欲しい」

だった人が、

そのうち、

「この鍛冶師の青紙一号が欲しい」

になって、

さらに進むと、

「この鍛冶師と、この研ぎ師の組み合わせが欲しい」

となります。

ここまで来ると、かなり包丁を楽しんでいますね。

  • 同じ鋼材
  • 同じサイズ
  • 同じような形

それでも、作り手が違えば性格が違う。

その違いを知っていくのも、日本の包丁の面白いところだと思います。

もちろん、最初の一本から職人名を全部覚える必要はありません。

「そういう選び方もあるんだ」

くらいで十分です。

もしそのうち、入荷時期の分からない包丁を何か月も待つようになったら、

ようこそ。

05

結局、自分が「使いたい」と思えるか

ここまで3回にわたって、包丁の選び方についていろいろ話してきました。

用途 サイズ ステンレスと炭素鋼 価格 切れ味 硬度 鋼材 見た目 職人

ずいぶん増えました。

でも、全部を完璧に理解してから包丁を買う必要はありません。

最初に必要なのは、

自分が何に使いたいのか。
何を大切にしたいのか。

それだけです。

  • 性能を最優先してもいい
  • 手入れの楽さを優先してもいい
  • 好きな職人で選んでもいい
  • 見た目にひとめぼれしてもいい

最終的には、

「これを使いたい」

と思えることがかなり大切だと思います。

そして、

「いろいろ読んだけど結局よく分からん」

となった方。

そのまま店に来てください。

用途と予算だけでも教えてもらえれば、一緒に考えます。

何も分からない状態から、その人に合う一本を探していく。

それも包丁屋の仕事です。

最初の一本を買って、使ってみる。

すると、

  • 「次はもう少し長いのが欲しい」
  • 「炭素鋼も使ってみたい」
  • 「今度は職人で選んでみたい」

と、自分の好みが少しずつ分かってきます。

一本ですべてを完璧に決める必要はありません。

包丁は道具です。

でも、せっかくなら、

使うたびに少し嬉しくなる道具を選んでください。

その一本を探すお手伝いができれば、私たちも嬉しいです。

そして最終的に、

「包丁を買うなら、とりあえず三浦刃物店を見てみよう」

と思ってもらえたら、この3本を書いた意味もあったというものです。

それでは、また次の記事で。

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