包丁の選び方|自分に合った一本を選ぶために

こんにちは。

実は以前から、「三浦刃物店」として発信しているコンテンツって、 意外と少ないよなと思っていました。

思ってはいました。

ただ、なかなか実行には移せていませんでした。

どうも、編集者です。

これからはこちらのブログで、包丁専門店というプロの視点から、 包丁についていろいろ語っていこうと思います。

普段よく見かける包丁の話はもちろん、それだけではなく、 もう少しユニークな内容も皆さんのもとへ届けていければ嬉しいです。

特に、

「若くて個性的な三浦刃物店」

という、強みなのか何なのかよく分からない特徴も、 ドンドン押し出していこうと思っています。


さて。

記念すべき第一回目ということで、皆様におかれましては、 さぞ期待に胸を膨らませていることでしょう。

しかし残念ながら、タイトルを見れば分かる通り、今回のテーマは

「包丁の選び方」

です。

皆さんの言いたいことも分かります。

「普通」
「面白味がない」
「n番煎じ」
……etc.

そういった言葉が聞こえてきますね。

ただ、実際に「包丁の選び方」と検索してみると、 似たような答えがたくさん出てくると思います。

それじゃあ面白くないよね。

ということで今回は、初心者さんでも包丁選びそのものを楽しめるような 記事に仕上げていきたいと思っています。

01

まずは「その包丁で何がしたいか」

いろいろ意気込んだはいいものの、結局最初に聞くことは、

「その包丁で何がしたいか」

です。

ここを変えることはできません。

ミニトマトを切るのに出刃包丁はおすすめできませんのでね。

まぁ極端な話は置いておいて、用途に合った包丁を選ぶことは とっても大事です。

コレクターを除けば、包丁は使ってなんぼなので、 「用途」という要素を外すことはできません。

実際、店頭にいらっしゃるお客様にも、

「どのような包丁をお探しですか?」
「どういった用途でお使いになりますか?」

と最初に尋ねます。

返ってくる答えとしては、

  • 料理(……用途とは?)
  • なんにでも
  • お肉
  • 野菜
  • 細かい作業

といったものが一般的です。

用途「料理!」はともかくとして、もっと大雑把に捉えてみると、 包丁の用途は

「万能」か「専門」か

の二つに分けて考えることができます。

軽く、それぞれのカテゴリを見てみましょう。

万能包丁

三徳・牛刀・ペティナイフ

様々な作業を幅広くこなす

最初の一本に!

専門包丁

柳刃・出刃・薄刃など

特定の作業に性能を振り切る

もっとこだわりたくなったら!

このように分けることができますね!

当然、考えるまでもなく、初心者さんが最初に選ぶべきなのは、 基本的には「万能」カテゴリです。

最初から「刺身を引きたい」「魚を捌きたい」と目的が決まっているのであれば 話は別ですが、普段の料理に一本使いたいのであれば、 まずは三徳や牛刀から考えるのが無難でしょう。

一方の「専門」カテゴリは、

「なんでもできる」より「これをもっとやりたい」

となったときに考えてみると分かりやすいと思います。

ちなみに筋引に関しては、プロの方が万能包丁に近い使い方をすることも多いので、 「専門」と呼ぶべきかは諸説ありますね。

もちろん、お金とやる気に満ち溢れている将来有望な初心者「様」は、 「専門」カテゴリから最上位モデルを一式買っていただけますと、 私たちがとっても幸せな気分になれますが笑

そうでない大半の初心者「さん」は、失敗しないという意味でも、 まずは「万能」カテゴリから選ぶのが賢いと思います。

……安心してください。

曖昧な表現でのらりくらりとはぐらかし、 答えを言ったようで言っていないという保険をかけたいわけではありません。

もう少し詳しく見ていきましょう。

02

「万能」な包丁とは何なのか

今回は、「万能」カテゴリに属する包丁を中心に見ていきます。

諸説ありますが、実際の使われ方まで含めると、

  • 三徳包丁
  • 牛刀
  • ペティナイフ
  • 筋引
様々な種類の日本包丁

包丁と一口に言っても、形も長さも様々です。

このあたりが候補に入ると思います。

言いたいことは分かりますよ。

「ペティナイフと筋引は専門カテゴリじゃないのか?」

ということですよね?

本来の用途だけを考えれば、その通りです。

しかし現実に当てはめて考えてみると、 ペティナイフをメインで使う家庭もありますし、 筋引をかなり万能に使っている厨房もあります。

ペティナイフと筋引の専門性について議論を始めると、 それだけで別の記事になりそうなので、いったんここで中断します。

今すべき議論は、

三徳包丁と牛刀の違い

ですね。

ざっくり分けると、違いとして見やすいのはこの三つです。

  • 刃渡り
  • 刃幅
  • 刃先のR

ひとつずつ見ていきましょう。

三徳包丁と牛刀の違い① 刃渡り

まずは「刃渡り」です。

一般的に、

三徳包丁:165mm~180mm前後
牛刀:180mm~330mm以上

で作られていることが多いです。

牛刀は短いものからかなり長いものまで幅広く作られているのに対して、 三徳包丁は165mm程度の短めのサイズまで選びやすいのが特徴です。

そのため、

「長い包丁には少し抵抗がある」

という方には三徳包丁を、

「料理に慣れていて、ある程度の刃渡りが欲しい」

という方には牛刀をおすすめすることが多いです。

もちろん、キッチンの広さやまな板の大きさによっても変わるので、 長ければ良いという話ではありません。

三徳包丁と牛刀の違い② 刃幅

次に「刃幅」です。

当たり前ですが、165mmの三徳包丁と330mmの牛刀を並べて、

「牛刀のほうが大きいですね!」

と言っても何の比較にもなりません。

ここでは、刃渡りに対する刃幅の比率として考えてみましょう。

実は、長くてデカいイメージのある牛刀ですが、 刃渡りに対する刃幅は三徳包丁のほうが大きいことが多い です。

つまり、同じくらいの刃渡りで比べると、 三徳のほうが縦方向に大きく、 牛刀のほうが細長い形になりやすいということです。

この違いがどう影響するのかは、 次の「刃先のR」と一緒に考えると分かりやすくなります。

三徳包丁と牛刀の違い③ 刃先のR

最後は「刃先のR」です。

これは簡単に言えば、

刃先のカーブがどのくらい緩やかなのか

という話です。

一般的には、牛刀のほうが刃渡りに対してRが小さく、 三徳のほうがRが大きくなる傾向があります。

はい。

今、

「Rの大きい小さい、逆じゃね?」

と思った方もいるでしょう。

その反応は正常です。

先ほど私はRについて「カーブがどれくらい急なのか」と説明しましたが、 より正確には、

その曲線を円の一部だと考えたときの、円の半径

がRです。

円の半径が大きくなれば、 同じ範囲で見たときのカーブは緩やかになります。

つまるところ、

Rが大きい=カーブが緩やか
Rが小さい=カーブが急

※厳密には、包丁の刃線を一つの円弧だけで表せるわけではありません。 ここでは分かりやすくするために、便宜上そういうものとして説明しています。

「刃先のR」と「刃幅」を合わせて考えると、

  • 三徳包丁は上下方向の動きを使いやすく、刻みものに向いている
  • 牛刀は前後方向の動きを使いやすく、押し切りや引き切りに向いている

と三浦刃物店では考えています。

もちろん実際の刃線は商品ごとに違いますし、 使い方にも個人差があります。

ただ、三徳と牛刀を選ぶときの大まかな考え方としては、 この違いを知っておくと分かりやすいと思います。

最後に、表に直してみましょう。

三徳包丁 牛刀
刃渡り 165mm~180mm 180mm~330mm以上
刃幅 広め 狭め
刃線

緩やか

三徳包丁の刃線

強めのカーブ

牛刀の刃線
得意な動き ↕ 上下に動かす
刻みものが得意
↔ 前後に動かす
押し切り・引き切りが得意

ここまで見てみると、 三徳と牛刀の違いは「長さ」だけではないことが分かると思います。

刃渡りが違って、刃幅が違って、刃線が違う。
その結果として、 包丁をどう動かすのが得意なのかにも違いが出てきます。

もちろん、三徳で引き切りをしてはいけないわけでも、 牛刀でネギを刻んだら怒られるわけでもありません。

あくまで「どちらの方が、その動きを得意としているか」という話です。

なので、最終的には自分の料理スタイルやキッチンの環境に合った サイズと形を選んでもらえればいいと思います。

さて。

形が決まったら、次はいよいよ中身です。

03

炭素鋼か、ステンレス鋼か

サイズと形が決まったら、次は中身について考えていきましょう。

包丁選びの段階では、大きく

「炭素鋼」「ステンレス鋼」 に分けて考えると分かりやすいです。

炭素鋼

炭素鋼は、ものすごく簡単に言えば、

「鉄と炭素を中心に作られた、比較的シンプルな鋼」

です。

もちろん白紙や青紙では成分も違いますし、 「どこからどこまでを炭素鋼と呼ぶんだ」という話を始めると この記事が終わらなくなるので、その辺りはまた別の機会に……。

包丁に使われる炭素鋼の魅力として挙げられるのが、

鋭い刃を作りやすく、研いだときの反応も良いこと

です。

一方で、大きな欠点があります。

錆びます。

炭素鋼の包丁に発生した錆

使って濡れたまま放置すれば錆びますし、 切る食材によっては刃が変色します。

この手間を許容してでも切れ味や研ぎ味を楽しみたい方には 非常に魅力的ですが、

「包丁にそこまで気を遣いたくない」

という方には向かないこともあります。

ステンレス鋼

一方のステンレス鋼は、

錆びにくさを大きな特徴とする鋼材

です。

ただし、

「ステンレス=絶対に錆びない」

ではありません。

条件が悪ければ普通に錆びます。

VG10、銀紙三号、SG2などさまざまな種類がありますが、 一般的に炭素鋼より錆びにくく、 日常で扱いやすいことが大きなメリットです。

そして現代では、非常に高い切れ味や刃持ちを持つ ステンレス鋼も存在します。

そのため、

「炭素鋼=切れる」
「ステンレス=切れない」

と覚えてしまうのはおすすめしません。

そんな単純な世界なら、 包丁屋もこんなにたくさんの包丁を置かなくて済みます。

結局、

切れ味や研ぎ味といった長所をより楽しみたいのか。

それとも、

錆びにくさという日常での扱いやすさを重視したいのか。

自分自身が「良いところを伸ばしたい」タイプなのか、 「欠点をなるべく少なくしたい」タイプなのか。

そんな感覚から選んでみても面白いと思います。

もっとも包丁の場合、その「欠点」が 錆びる なので、人間の個性より少々深刻ですが……。

04

最後に、予算を決めましょう

ここが一番大事です。

ここの数字によって、

皆さんと私たちがどれくらい幸せになれるか

が決まります。

とはいえ、当然ながら皆さんそれぞれに予算はあると思います。

「予算別おすすめ包丁〇選!」

みたいなことをやってもいいんですけど、 それをやってしまったら、 ここまで一緒に考えてきた意味がありません。

まず、

何に使うのか。

次に、

どのサイズと形が使いやすいのか。

そして、

炭素鋼とステンレス、どちらが自分の生活に合っているのか。

そこまで決めてから予算を当てはめてみてください。

その条件が揃えば、 最初は何百本もあるように見えた選択肢がかなり少なくなります。

そして、

「この中ならどれがいい?」

となったら、そこで初めて細かい鋼材や切れ味、 柄、職人、デザインといった話が始まります。

様々な仕上げやデザインの日本包丁

……そうです。

まだ終わっていません。

むしろ包丁屋として面白いのはここからです。

次回は、

「高い包丁は、本当に良い包丁なのか?」

という話をしてみましょう。

値段が上がると何が変わるのか。
切れ味とはそもそも何なのか。
硬度が高ければ高いほど良いのか。

この辺りを掘っていこうと思います。

それでは、また次の記事で。

 

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